ボローニャブックフェアに行ってきました 2013年5月 あかい あやこ

 2013年3月25日、26日の二日間、イタリアはボローニャの絵本見本市をみてきました。見本市から車で10分のホテルに泊まったため、当日朝から、食堂は国際色豊かな顔ぶれでいっぱい。隣の席では、男性客が絵本をよみながらトーストをほおばっていました。

ボローニャ入り口

 期待に胸を寄せて、着いた所には巨大な展示場。霧雨が降っていました。建物には入り口がたくさんあって、どこから入って良いか分かりません。試しに入った所はメインエントランスからかなり離れた所でした。開放的な空間にたくさんのブースが並んでいて迷路のように入り組んでいます。

 朝早いのに、ブースでは既に編集者たちが商談に入っていました。真剣味に帯びた会場の雰囲気と、自分のいる場所がまったく分からない状態にパニックになりそうになりながら、ようやくエントランスにたどり着き、地図をもらうまでに1時間程かかりました。見取り図が無いと、迷ってしまうくらい、どこもかしこも似た配置です。

見本市見取り図とネイムタグ

 入り口付近には、原画展入選者や招待作家の作品が飾られていました。日本人の作品もたくさんありました。小学校の教室やきつねが出てくるものや、墨絵のようなものなど、日本人の心が伝ってくる雰囲気の絵が印象的でした。メディア関係者は、気になる作品を何枚も写真に撮っていました。

 作品展の隣には、各国のイラストレーターが編集者にアピールするための掲示板がありました。イラストレーター自作のポスターや名刺入れ、カードなどが、掲示板に所狭しと貼られています。イラストレーター達は、もう何年も通っていて勝手を知ったるのか、セロテープや画鋲など必要なものを持ってきて、テーブル等でプレゼン準備作業をしていました。私は、プレゼン資料は製本作品と原画しか持って行かなかったので、近くのブースでメモパッドを買って、食堂でいそいで作品の英訳をつくりました。二日間通して、イラストレーター達が皆とても準備がよいのを目の当たりにして、相当の覚悟と気合いで来ているのだなと身が引き締まる思いがしました。

 今回、二社の出版社に作品をみてもらいました。出版社のなかで積極的にイラストレーターの作品を見てくれる所は、長い列が出来ていました。

フランス持ち込み

 はじめに並んだ所は2時間待ちのフランスの出版社です。優しい雰囲気の編集者が、一枚一枚丁寧に、作品を見ていました。列に並んでいる間、他のイラストレーターたちが出版社と話しているところを見ることができたのが、とても面白い経験でした。持ち込みに来たイラストレーター達が、売り物と見紛う程きちんとした製本作品を持参していたのが印象的でした。中には、細かいキャラクターが立体的にとび出す絵本を精巧に作っているイラストレーターもいて、編集者は興味津々のようでした。

 私の番が来ると、編集者は、にこやかに微笑んで迎えてくれました。そしてお話を一字一句読んで、時々笑ったり声をあげて、反応してくれました。絵をみるだけでなく、お話もきちんと味わおうとしてくれるんだという姿勢を、嬉しく思いました。残念ながら、私の作品は出版社のテイストに合っていないと言われましたが、その出版社の本棚は日本人作家の作品もいくつか並んでいて、皆見本市でチャンスを得たのだろうなぁと思いを馳せました。やはり見本市は、夢の叶う場所だと思いました。

フランス持ち込み

 次に並んだ出版社も、フランスの出版社です。三人の編集者が持ち込み作品を見ていました。4日間の見本市で5人の新人作家を探しているとのことでした。列に並んでいる人のなかには、ボローニャ入選者、自国で出版経験のある人もいました。編集者は作品を一瞥して首を横にふって断ったり、興味なさそうにしていたり、突然定規を取り出して作品を測り出したり、作品によって態度が全く異なっていたので、どきどきしながら順番を待ちました。

 私の番が来ました。編集者は原画作品を、ぱっぱっとめくっていって、きみのようなラフな絵を描くひとは少ないと言いました。そして、UAEのコンペに応募してみないかと、UAEのブース紹介してくれました。お金をたくさんもらえるよと茶目っ気たっぷりに言って、編集者はにっと笑いました。

イタリアブース

ハンガリーブース

 二社の持ち込みが済んだ後、ゆっくり各絵本ブースをまわりました。各国のブース内で、編集者達がミーティングをしています。英語がネイティブでない編集者同士が、つたない英語を使って、必死に意思疎通しようとしている姿が心に残りました。本屋のように絵本や雑貨を売っている楽しげなブースもあれば、一冊ずつ絵本が並んでいるだけのシンプルな作りのなかで編集者が商談に打ち込んでいるブースもありました。

 駒形克己さんの絵本コーナー、今井彩乃さんのサイン会等、日本人作家さんが活躍している所もみられました。どの国の絵本にも、言葉がわからなくても絵から伝わる暖かさ、ユーモアがあり、絵本は万国共通だと改めて思いました。

メキシコブース

 多くの絵本ブースをみて、ひしひしと感じたのは、絵本という子供に対する優しさの表現を扱っているからこそ、編集者達はよいものを残していくための地道でおわりの無い努力を続けているんだなということです。本当にいいものを選びとろう、伝えていこうという真剣勝負の厳しい空気を、会場のいたる所で感じました。会場を訪れるイラストレーターの姿勢にも、必死さ、作品に対する妥協のなさ、自信を強く感じました。

 とても貴重な体験が出来た事を感謝しています。かなりかいつまんではいますが、私のボローニャ見本市体験記を終わります。(あかい あやこ)